ティアフォーのEdge.Autoチームの本橋裕一です。第1回目のブログでは、ティアフォーがカメラ開発に取り組む理由、デジタルカメラと車載カメラシステムの概要について解説しました。
今回は、デジタルカメラの中核部品であるイメージセンサーに焦点を当て、特にティアフォーの車載カメラ「C1カメラ」と「C2カメラ」で採用しているCMOSイメージセンサーについて解説します。
2024年現在、ほぼ全てのイメージセンサーがCMOS(Complementally Metal-Oxide-Silicon)を採用していますが、2000年代の終わり頃まではCCD(Charge Coupled Device)が主流でした。CCDとCMOSはどちらも光を電気信号に変える機能を有していますが、その構造と動作原理に大きな違いがあります。
CCDの場合、フォトダイオードで生成された電荷を増幅せずに、CCDの持つ転送機能によって読み出し回路まで転送し、最後の読み出し回路で信号を増幅します。
CMOSの場合、それぞれの画素で生成された電荷は、各画素に配置された増幅回路によって増幅された後、各画素をXYアドレス方式で選択することで、読み出しを行います。
このように、CCDとCMOSの動作原理における大きな差は以下の通りです。
CMOSは信号を増幅してから転送するため、信号伝送系路上で受けるノイズに対しての耐性が高くなります。また、CMOSイメージセンサーのXYアドレス選択形式の方が、読み出しの自由度が高く、順走査、逆走査、読み飛ばしなどが可能です。
前述のように、イメージセンサーの進化の過程では、CCDが実用化において先行し、その後CMOSへの置き換えが進んできました。これはCCDが実現していた高画質、高感度、低暗電流などをCMOSセンサーでも実現できるようになったことと、イメージセンサーに様々な機能を集積したいという要求が高まってきたためです。
基本的に、CMOSイメージセンサーはCPUやGPUといったロジック半導体やアナログ半導体と同じように、CMOSプロセスで製造することができます。そのため、光を電気信号に変える機能の他に、電気信号(アナログ信号)をデジタル値に変換するA/D(Analog-to-Digital)コンバーターや、信号処理回路、出力回路などを画素と同一チップ上に集積するSoC(System-On-Chip)化できることが利点です。
特に、フルHD(High Definition)以上の解像度を持つデジタルビデオカメラなど、高速な信号読み出しを必要とするアプリケーションを実現する場合、フォトダイオードから読み出した信号を、画素アレイに列並列に実装されたA/Dコンバーターに高速でA/D変換し、デジタル転送することで、信号を高速に読み出しても低ノイズを実現できるCMOSイメージセンサーの優位性が際立つようになってきました。このことからCCDからCMOSイメージセンサーへの移行が進みました。
また、バッテリー駆動される携帯電話やスマートフォンのカメラ機能の場合、低電圧・低消費電力で駆動できるCMOSイメージセンサーの方がこれらのデバイスに適していることも、CMOSイメージセンサーへの移行が進む大きな要因となったと言えます。
CCDに対する初期のCMOSイメージセンサーの欠点として挙げられていたのが、感度の低さと斜入射特性の小ささでした。斜入射特性とは斜めから入ってくる光に対する感度で、F値が小さなレンズを用いる際に重要になります。CMOSイメージセンサーは構成上、光を受けるフォトダイオードの上に数層にわたる配線層が配置されています。初期のCMOSイメージセンサーの感度の低さや斜入射特性の小ささは、光が配線層を通過してくる間に配線層によって光が遮られることに起因します。この問題を解決したのが裏面照射型CMOSイメージセンサーです。
裏面照射型CMOSイメージセンサーの構造 出典:ソニーセミコンダクタソリューションズ
上図は、表面照射型CMOSイメージセンサーと裏面照射型CMOSイメージセンサーの構造の違いを示したものです。裏面照射型CMOSイメージセンサーは、フォトダイオードと配線層の関係を反転させることで、配線層の逆側から光が直接フォトダイオードに入射します。これにより、フォトダイオードに取り込むことができる光の量を増やすことが可能です。加えて、配線層で斜めから入射してきた光が遮られることがなくなることから、より入射角の大きな光も取り込むことができるようになり、斜入射特性を改善することができました。
裏面照射型CMOSイメージセンサーでは、シリコンウェーハにCMOSイメージセンサーを形成してから薄く削り、これを支持基板と呼ばれる別のシリコンウェーハに張り合わせています。この支持基板に回路を形成することで、画素と回路を分けて作成するのが、積層型CMOSイメージセンサーです。
積層型CMOSイメージセンサーの構造を採用することにより、これまで画素周辺に配置していたA/Dコンバーターや読み出し回路を別のシリコンチップ(ロジックウェーハ)に配置することが可能になり、チップの面積を小さくすることができます。また、画素ウェーハとロジックウェーハを別のプロセスで製造することができるようになるため、それぞれのウェーハが求める特性に応じて製造プロセスを最適化していくことが可能です。
以上の理由により、2024年現在、高機能CMOSイメージセンサーのほとんどが積層型CMOSイメージセンサー構造になっています。ティアフォーの車載カメラ「C1カメラ」と「C2カメラ」で採用しているCMOSイメージセンサー「ISX021」と「IMX490」も、積層型CMOSイメージセンサーです。
前述の通り、近年のCMOSイメージセンサーは積層型を採用しており、以下の図に示すような構造になっています。
各構造の概略は、以下のようになります。
各画素のフォトダイオードの上には小さなマイクロレンズが規則正しく並んでいます。マイクロレンズはレンズを介して入射してきた光を各フォトダイオードに集光します。
フォトダイオード自体は光の色を検知できませんが、フォトダイオードの上にカラーフィルターを配置し、特定の色を選択的に透過させることで各フォトダイオードに色情報を持たせることができます。
上図は一般的なカラーフィルターの配列である、ベイヤー配列です。この配列ではGreen/Red/Blueのフィルターが2:1:1の割合で配置されています。
暗所における感度を高めたり、特定の色(波長)の色分離を改善するためにWhite(透明)フィルターを用いたり、CyanやYellowのフィルターを用いる場合もあります。この点は各イメージセンサーメーカーや画像処理プロセッサ(Image Signal Processor:ISP)メーカーの工夫が問われる領域となっています。
これまでに説明してきた通り、フォトダイオードは光電変換の原理により入射してきた光を電荷に変換します。入射した光をいかに効率よく電荷に変換することができるか、逆に入射する光が無い、または少ない場合に、どの程度暗電流と呼ばれるノイズを抑えることができるかが重要な性能指標であり、性能向上に各社が注力しています。
画素トランジスタは、フォトダイオードで生成した電荷を増幅し、電圧・電流に変換します。一般的に、1つの画素は以下の4つのトランジスタで構成されます。
画素のサイズを縮小するため、複数の画素でトランジスタを共有する構成を持つ製品もあります。
フォトダイオードと画素トランジスタを合わせて1つの画素を構成します。画素のサイズは縮小が進んでおり、近年の開発では1画素のピッチが1.0 umを下回り、0.56 um程度まで縮小されてきています。
フォトダイオードが形成されている画素チップと回路が形成されているロジックチップを張り合わせた構造です。TSV(Through Silicon Via)やCu-Cu接続(Cupper-to-Cupper Connection)とよばれる手法により、上下のチップを接続します。
上記で説明したロジックウェーハです。A/DコンバーターとA/D変換以降の信号処理を行う回路が実装されています。
今回はCCDとCMOSの違い、CMOSイメージセンサーの進化の歴史、積層型CMOSイメージセンサーの構造について解説しました。次回はイメージセンサーの動作の概略とグローバルシャッターとローリングシャッターについて解説します。
Yuichi Motohashi | 本橋 裕一
Edge.Autoチーム
2023年よりEdge.Autoチームでカメラと開発キットを担当。前職では車載用CMOSイメージセンサーの企画・開発・製品化および欧米のOEM・Tier 1への導入に10年以上従事。専門は車載用CMOSイメージセンサ(画素/HDR方式・機能安全・サイバーセキュリティ・信頼性)及び車載カメラシステム。
ティアフォーの車載カメラは、最高レベルの性能と信頼性を備え、様々な分野で活用することができます。120 dBのハイダイナミックレンジを実現し、屋外または屋内の環境においても、明るい部分の鮮明さを維持しながら、暗い部分の細部までキャプチャします。「C1カメラ」は、2.5 MPの解像度を持ち、国内外100以上の企業で採用され、様々な用途で高い信頼性を発揮しています。「C2カメラ」は、「C1カメラ」と同じハイダイナミックレンジ機能とLEDフリッカー抑制機能を維持しながら、解像度を2倍の5.4 MPに向上させ、より遠距離での物体認識かつ、広い範囲の画像撮影を可能にしました。これらの車載カメラは、Amazonのティアフォーストアでご購入いただけます。
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