前回は、自動運転車を走らせるためには自動運転ソフトを道路環境に対して習熟させることが必要で、オープンソースソフトウエアを活用することで社会的なメリットが大きくなる点について説明しました。今回は、自動運転ソフトウエアを習熟させるべき道路環境の範囲を規定した、運行設計領域(Operational Design Domain:ODD)について説明します。
ODDは、自動運転車が走行可能な領域を指し、ティアフォーではODDをODD1~ODD3の3種類に類型化して自動運転の開発を行っています。ODD1は自動運転車専用の道路環境、ODD2は管理者によって管理され、飛び出しや割り込みなどがないようルールが守られる道路環境、ODD3は人や車が混在するいわゆる一般公道を想定しています。この3種類に加え、人が立ち入り出来ない自動車専用道路のようなODDの類型化も必要になってくるはずです。これらのODDの類型化はODDを概念的に分類することで自動運転ソフトウエアの開発とその運用に対する理解を合わせるのに非常に役に立ちます。

車を運転される方であれば、自分が車を運転することができる道路や、その環境のイメージはおよそつくと思います。自宅から会社までの道、ショッピングモールまでの道、友人の家までの道など、自分が車を運転して走らせることができる道路のイメージがODDの概念そのものです。上で説明したティアフォーのODDは、ODDを類型化したものであって、具体的なODDを定義しているわけではない点には注意が必要です。自動運転における実際のODDの定義は、以下のようにかなり厄介なものになります。
例えば、普段車を運転している道であっても、「霧が出ているので今は出かけるのはやめよう」とか、「雪が積もっているので、溶けるのを待って出かけよう」といったように、運転可能かどうかは道路の環境によって変わってきます。さらに同じ道幅と同じ曲率の道路であっても、乗用車に乗っていくのか、大型トラックに乗っていくのかによって、運転可能な道路は異なります。さらに、初心者なのか熟練ドライバーなのかというようなドライバーの運転スキルによっても運転可能な領域は変わってきます。また、道路工事による車線規制や、事故による通行止めなども考慮しなければなりません。これらの概念がODDそのものであり、ODDには道路環境のさまざまな要素が含まれてきます。
そして自動運転車はODDの範囲内であれば自動運転を継続しますが、ODDの範囲を外れた場合は自動運転をやめなければなりません。このODDの範囲を外れた時に、運転席で待機していたドライバーに運転を引き継ぐのが自動運転レベル3です。
レベル4のODD定義はより難しい
一方、運転席にドライバーのいない自動運転レベル4では、車がODDを外れたからと言って「運転をドライバーに交代」という訳にはいきません。大雨や霧などでODDの範囲を外れた場合、自動運転車は危険を回避する動作が求められますが、ODDを外れた時の危険を回避するための動作は自動運転車両にとってかなり難しい問題です。具体的には、道路の車線上に急停車することは安全ではない場合が多く、通常は車を路肩に寄せて停車することが求められます。一方、停車できる路肩がない道路の場合には、速度を落として最寄りの駐車帯までの走行が必要となる場合もあり、目前に事故が発生していれば有無を言わさず急停車が求められる状況もあり得ます。このように自動運転車がODDを外れた時には、道路環境や交通環境によってリスクと安全のバランスを見た、異なる対応が求められます。
まとめると、ODDは自動運転車の運行可能領域を指すが、自動運転車はODDの範囲内なのか範囲外なのかを理解した上で、自動運転を継続するか否かを決めなければなりません。このため自動運転の運行が可能なODDの境界を決める必要がありますが、これは道路環境のみではなく、車両の取り回し性能や自動運転の運転能力にも依存します。特に自動運転レベル4においては、ODDを外れた時に運転席のドライバーに頼れないためODDの定義はより重要で難しくなります。
次回は、自動運転車がODDを外れた時、できる限り安全にリスクを回避する動作であるミニマム・リスク・マヌーバー(Minimal Risk Maneuver:MRM)について説明します。
Toshihide Ando | 安藤俊秀
ティアフォー・フェロー
2019 年入社。前職ではソフトウエア開発を中心に、自動車の各種電子システム製品などの研究開発に従事。技術本部バイス・プレジデントを経て、現職。
ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。
多くの職種で採用をしています。詳細は、ティアフォーの「求人ページ」をご覧ください。カジュアル面談をご希望の方は、応募する際に「カジュアル面談希望」と記載してください。
「どの職種で自分の経験を活かせるかが分からない」「希望する職種が見つからない」などの場合は、ぜひ「キャリア登録」をお願いします。
お問い合わせ先
- メディア取材やイベント登壇のご依頼:pr@tier4.jp
- ビジネスや協業のご相談:sales@tier4.jp
ソーシャルメディア
X (Japan/Global) | LinkedIn | Facebook | Instagram | YouTube
関連リンク
