TIER IV Minibus
ティアフォーで事業の企画・推進を行っている藤居祐輔と岡崎慎一郎です。
ティアフォーは、全国各地での自動運転移動サービスの事業化を支援しています。2023年4月から現在までの約1年間で、23か所での走行実証を行いました。また、リスクアセスメント、地図作成、アドバイザリー業務を含めると、26か所での取り組みに関与しました。
本記事では過去1年の取り組みを振り返り、報告します。
ティアフォーの全国各地での実証活動概要
まず、自動運転の実証実験について説明します。
自動運転の必要性と技術的挑戦
自動運転移動サービスには、運転手不足による交通問題の解決や、新技術による地域活性化など、多岐に渡る期待が寄せられています。しかし、現在の技術では完全自動運転には至っておらず、既製品を買ってそのまま動くという自動運転は存在しません。
また、システムが主体となって運転を行うレベル3以上の自動運転移動サービスの実装には、走行環境が自動運転システムとして走行できる環境条件を満たしているという認可を、国土交通省から受ける必要があります。
したがって自動運転移動サービスの実装においては、現地での実証実験を通じて、自動運転システムの調律や、走行環境条件を満たしているかの検証を行う必要があります。
実験の目的
自動運転の実証実験は、技術的な検証と社会受容性の向上という2つの目的を持っています。
技術的な検証では、車両が安全に運行できる条件を確認し、自動運転によるサービス運用が実現可能かを検証します。また自動運転ではあるものの、運転手が乗車しており、自動運転システムが誤った判断をした場合に手動介入します。その際に誤った判断のデータを集め、より完成度の高いシステムに改善しています。
社会受容性の面では、自動運転車が既存の道路インフラや交通規則にどのような影響を与えるかの検証や、自動運転移動サービスが地域の住民に価値を与え、受け入れられるサービスとなることを理解いただく機会として実証を行います。
実証実験の進め方とティアフォーの役割
自動運転移動サービスの実装は、最終的にレベル4で運用可能となるまでに3〜4年の期間をかけて行います。
初年度は自動運転ができること、移動の需要が見込まれることなど、様々な前提をもとにコースを選定し、自動運転の実証を進めます。
2年目以降は初年度の結果を踏まえてコースの修正等を行いながら経験を重ね、許認可取得を進めていきます。許認可取得と並行して、自動運転を盛り込んだサービスとしての実証を進め、実運用に向けて進める想定です。

また、各年度内では下図のようなステップで進めています。これらに対して、ティアフォー単独ではなく、様々なパートナーと共に取り組んでいます。ティアフォーは主に自動運転車両の提供、走行ルートの検討、事前のシミュレーションや実証実験中の調整、運用時のソフトウェア、ハードウェアの保守を行っています。

実証実験のステップ
今年度利用した車両
実証地域での利用用途を考慮し、車両を選定しています。
今回は2023年の実証実験から導入が始まり、今後の社会実装用の車両と現時点で位置づけている「ティアフォーMinibus」を紹介します。
ティアフォーMinibus
Minibusはティアフォーが「fanfare (ファンファーレ) 」のラインナップとして提供する小型バス(定員23名、客席15名)です。
2023年の実証実験から導入が始まった新型車両であり、地方公共交通の要である定時定路線のバスとしての役割を想定した車両です。
Minibusには様々な種類のセンサーが搭載されており、レベル4認可の必要項目でもある、制御に必要な機能の冗長化にも対応しています。Minibusのコンセプトとしては、ソフトウェアの搭載について制約は設けていませんが、ティアフォーとして実証を行う場合には、ティアフォーの自動運転ソフトウェアを利用しています。
Sensor configuration
今年度の実証地域
2023年度 自動運転実証 ティアフォー参画地域
上記の図にティアフォーが関与した実証地域を示します。次年度以降の走行を見据えて、高精度三次元地図の作成や、プロジェクト企画までに留まった地域も一定数あるため、実際の走行を行った場所は23か所となります。今年度は最長往復約60 kmのルートや、市街地や狭い観光地など、さまざまな環境で実証実験を行いました。また、実証地域が全国各地に散らばっているため、降雪や豪雨、気温など自動運転システムが対応すべき過酷な環境下でのデータも収集することができました。
各拠点ごとに走行期間、頻度、コース等条件が異なるため、走行距離も異なってきます。各地での走行距離 (一部のエリア省略) については下図の通りです。 最も走行距離が長いエリアで約2000 kmになりました。例年と比べても、多くの地域かつ長い距離を走行しており、こうした数字からも実装に近づいてきている感覚があります。

各地での走行距離
塩尻市と小松市の事例を紹介します。
塩尻市の事例
長野県塩尻市は2020年から自動運転の実証に取り組んできた、パイオニアである地域です。実証開始当初から、塩尻駅を起点として様々なルートで自動運転の実証が行われてきました。自動運転による持続的な公共交通の実現のみならず、自動運転が地域を活性化させることを期待した取り組みを行っています。地域人材によって成り立つ自動運転サービスの実現や、自動運転を題材とした教育によって、先端技術に子どもたちが触れること、そしてこれらの取り組みによって社会として自動運転を受け入れる土壌が出来上がりつつあることが、塩尻市の自動運転の特徴です。
2023年度の実証においては、Minibusの導入、地域人材のみでの運行、実サービスとしても利用が期待される予約システムの活用などを検証しました。今回走行ルートに高校があることから、毎朝自動運転車で通学する高校生も出てきており、まさに実装に近づいていることを実感しています。
塩尻市の自動運転事業はこちら。

幼稚園児・高齢者・移住者家族を含む試乗
小松市の事例
石川県小松市は、塩尻市と同様に2020年より自動運転に取り組んでいる地域です。2024年3月16日の北陸新幹線小松駅開業に伴い、新幹線駅と空港という2大交通拠点が整備されることになります。これらの駅と空港を自動運転車両で結ぶ「レール&フライト」の交通網を拡充することで、北陸エリアの交通の要衝として、地域全体の成長と発展が期待されています。
昨年度は、ティアフォーが支援し、GSM8を利用しましたが、速度と乗車定員の面で十分な性能ではありませんでした。今年度の実証では、新たにMinibusを導入し、最高時速35 km、着席定員15名と改善されています。
また、新幹線駅開業に先立って2024年3月9日には、運転手を乗せた自動運転レベル2で、他のバスと同様に一般乗客から運賃を徴収する通年運行を開始しました。ティアフォーにとって、通年運行と運賃徴収は初めての取り組みとなります。
小松市の自動運転事業はこちら。

小松駅~小松空港 走行ルート
- 概要:小松駅~小松空港間 片道4.4 km
- 車線数:片側2車線
- 信号機:17か所
- 他の車両:あり(周囲の車両と混在して走行)
- 車歩分離:あり
- 停留所:小松駅・小松空港(途中停留所なしの快速便)
小松駅前を走るMinibus
ティアフォーの自動運転システムのできること
ティアフォーの自動運転システムは日々開発が進んでおり、対応できるユースケースも年々増えています。昨年度の自動運転と、今年度の自動運転を比較しながら、1年間での技術の進化についてご紹介します。
昨年度の自動運転
昨年度はGSM8という時速20 km未満で走行するグリーン・スロー・モビリティの車両を用いた自動運転実証実験が主でした。ユースケースに対応するための機能は以下の画像の通りです。


これらの機能があれば、簡素なエリアにおいて一定の前提条件を置けば、一通りの運転操作を自動運転化できます。しかし、ルールが必ずしも守られない状況や、立ち往生によって周囲への影響が大きい環境では、機能が十分とは言えませんでした。また、複雑な公道等では路上駐車車両の回避などに対応できないシーンも多く、自動運転の割合を下げる要因となっていました。
特に運用が難しかった点は、昨年度時点では他の交通参加者の現在位置のみを見て判断していた点です。事前に見るべきエリアを設計し、地図に設定することで、障害物の現在位置のみであっても衝突を回避するように判断していました。例えば、交差点で対向車線をXメートル先まで見るという設定を地図に埋め込み、障害物がいれば停止するような動きとなります。この手法は、システムがどうしてその判断に至ったのかの説明が容易にできるメリットはありますが、調整の難易度が高く、交通状況によっては自車が通行可能であっても止まり続けて周囲の交通を停滞させる原因になってしまったり、想定していない速度で対向車が来た場合には対応しきれないという問題が発生します。 そのようなケースにおいては、セーフティ・ドライバーによるオーバーライド(自動運転操作を手動運転操作で上書きする)操作によって手動運転に切り替えており、自動運転率の低下として性能を評価しています。
今年度の自動運転システム




ここまで機能が揃ったものの、日本各地で持続的に実装していくために不足している点がまだあります。例えば、人が運転する場合においても戸惑いが生じるような、動く障害物を回避する機能や、狭い道路で対向車と譲り合うような機能です。移動する物体の回避については、回避するためのルートの作成をリアルタイムで更新し続ける必要があります。この際、移動する物体の移動予測精度が他の場面に比べて格段に求められたり、対向車線などで立ち止まらないような判断をする必要があります。狭い道路での譲り合いについても、自動運転車が自律的に判断することは難易度が高いです。また踏切についてはリスクの観点から対応が難しく、運行設計領域 (ODD) 対象外としており、今後の対応の見通しは立っていません。
また、雪や大雨などの悪天候についても難易度が高く、必要に応じて運行停止や手動介入を前提とする形を取っています。これらについては全国各地で実証実験を行うことで、様々なデータを集め、改善に向けた取り組みを進めています。
今年度と昨年度の実証実験の違い、来年度への抱負
自動運転の事業としても大きな変化がありました。これまでの実証実験はティアフォーやパートナーが所有する車両を利用して各地で一定期間に区切って行ってきましたが、今年度は大きく様相が異なっています。 塩尻市では自治体と地域の交通事業者が協力して自動運転車両を所有し、地域の人材のみで運行できるようになり、地域に根付き始めました。小松市においても自動運転車を所有し、ティアフォーとしては初の本格的な有償運行が始まりました。また、千葉県横芝光町においても同様に自動運転を用いた通年運行が始まり、全国で2件のティアフォーがサポートする通年運行地域ができました。
さらに、ティアフォーは2023年10月に相模原市のGLP ALFALINK相模原にて、道路運送車両法における自動運転レベル4の認可を取得しました。来年度のさらなる発展に向けては各地でのレベル4の認可取得、さらに通年運行拠点の増加に向けて邁進して参ります。
横芝光町におけるレベル2自動運転車の通年運行
小松市におけるレベル2自動運転車の通年運行
おわりに
ティアフォーは自動運転の技術が社会課題の解決に寄与することを目標に、引き続き各地での社会実装を目指していきます。
2024年2月に発表したソリューション「L4 RIDE」で自動運転移動サービスを導入したい地方自治体や公共交通事業者に対して提供を開始しました。これまでの実証実験や許認可取得の経験を活用して、初期の導入から継続的なサービス運用まで、自動運転に必要なハードウェア、ソフトウェア、規制対応を一気通貫で支援します。
自動運転移動サービスの導入や補助金の申請を検討している自治体と交通事業者の方々向けに、2024年4月10日に第3回自動運転実証実験オンラインセミナーを開催しますので、ぜひ奮ってご参加ください。詳細はこちらのページをご確認ください。また、セミナーに参加できない場合でも、サービスの導入や補助金の申請を検討されている場合は、l4ride@tier4.jpまでご連絡ください。
Yusuke Fujii | 藤居 祐輔
エンジニアとして創業当初から実証実験に関わり、2020年東京オリンピック・パラリンピックの選手村にて利用された自動運転システムの開発責任者を務める。現在はバスサービス導入に向けた社会実装事業、センサ販売事業双方のビジネスオーナーを担当。
Shinichiro Okazaki | 岡崎 慎一郎
2019年ティアフォーに入社後、大手自動車OEMとの自動運転車両の共同開発や、自治体等への自動運転バスサービスの導入、業界団体と連携した自動運転人材育成等のプロジェクトに取り組む。バスサービス導入に向けた社会実装の事業開発全般をリード。
ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。私たちと共に自動運転の社会実装を実現していくことに興味がある方のご応募お待ちしています!
全国各地の自治体や交通事業者やパートナー企業と自動運転サービスの導入をリードする方を募集しています。
※その他にも多くのポジションで採用を強化しています。ティアフォーの求人ページをご参照下さい。
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