前回のブログでは「Autoware」とティアフォー誕生の経緯について説明しましたが、今回は自動運転におけるオープンソースソフトウエア(Open-Source Software:OSS)の意味について理解を深めたいと思います。
自由に配布・利用できるOSS
OSSとは、ソースコードが公開されており誰でも自由に利用する事ができるソフトウエアです。有名なのは「Linux」で、サーバー系・組み込み系問わず今や最も広く利用されているオペレーティングシステムとなっています。その他にも、ワープロや表計算ソフトといったものもOSS化され利用されています。一方で多くのソフトウエアは利用や配布に制限のあるいわゆる「プロプライエタリ・ソフトウエア」です。WindowsやMicrosoft Officeのような商用ソフトウエアがこれに該当します。
商用ソフトウエアはその利用や配布を制限することによって企業がソフトウエア販売ビジネスを成立させています。その一方、OSSは自由に配布・利用ができるところが特徴で、ソフトウエアを独占せずに広く普及させていく事に適しています。
自動車の分野に目を移すと、エンジン制御、ブレーキ制御、グラフィックメーターなど非常に多くの機能にソフトウエアが使われています。ただし、それらのソフトウエアは全て決められたハードウエアに工場で組み込まれて出荷されており、決してハードウエアと別で扱われることはありません。
車には自動緊急ブレーキ(Autonomous Emergency Braking:AEB)や車線維持支援システム(Lane Keep Assist System:LKAS)といった運転支援機能のソフトウエアが電子レンジや炊飯器などの家電と同じように組み込まれ、そして年々高度化しています。ただ、ドライバーが車を使うときに車載ソフトウエアの存在を意識することはなく、もしもあるとすれば、品質改善などのためにカーディーラーで行われるソフトウエアアップデートの時くらいでしょう。
頭脳に代わる自動運転ソフトウエア
一方、自動運転ソフトウエアの場合は少し事情が違ってきます。ここでの自動運転とは「レベル4」以上のドライバーを必要としない高度な自動運転の事を指します。ご存じのように自動運転では、人間のドライバーの代わりにコンピューターが車を操作します。そしてそのソフトウエアはドライバーの頭脳に代わり、車周辺の環境を認識し、どこに向かって車を走らせるかを判断し、実際の運転操作の指示を車に出します。

走行する車両をデータにより視覚化
ここで人が車を運転できるようになる過程を考えてみます。車を運転したいと思った人はまず自動車学校に入校し、決められたコースで運転練習をすると同時に、交通法規や交通ルールに関する学科教習も受けます。そしてある程度運転が出来るようになると仮免許を取得し、指導教官と一緒に実際の道路での運転教習を受けます。これらの過程を重ねた後に卒業検定試験を受け、無事合格することで晴れて運転免許を取得できます。
しかしながら、免許取り立てのドライバーが初めての道路を運転する場合、ベテランドライバーと同等のスムーズで安全な運転ができるかというと、必ずしもそうではありません。ベテランドライバーは多くの運転経験を積み重ねることで、色々な状況に対応できる運転スキルを身に着けており、免許取り立ての初心者ドライバーは、実際の道路での運転を繰り返しながら習熟していく必要があります。さらに言えば、ベテランドライバーであったとしても、一度も行ったことのない外国の道路を初めて運転する場合、スムーズかつ安全な運転ができるかというと必ずしもそうではありません。
国が異なれば交通法規や交通マナーも異なり、さらには道路環境も大きく異なります。それらに習熟していない状況での運転においては、目的地にたどり着けなかったり、交通違反を犯したり、さらには危険な状況に陥ることもあるかもしれません。このように、ある地域ではベテランドライバーであっても、不慣れな道路を運転する場合には初心者のような状態となり、さらには右側通行、左側通行といった基本的な交通ルールの違いがある場合には、初心者以上に危険となる事もありえます。
車を上手く運転できるようになるためには、道路環境に対しての習熟が最も重要であり、車のメーカーやブランドはあまり重要ではありません。そして慣れない場所で車をうまく走らせる一番良い方法は、その場の交通ルールや道路環境に習熟した運転手に車を運転してもらうことです。
ここまでの説明でお分かりかと思いますが、自動運転を最も効率的に普及させる方法は、その道路環境に習熟した自動運転ソフトウエアが、車のコンピューターに乗り込み車を運転することです。そしてそのソフトウエアはいくらでもコピーすることが可能なため、習熟したソフトウエアが多くの車で使われれば使われるほど、社会的なメリットは大きくなっていきます。
われわれがOSSによる自動運転を志す意味はここにあります。そして、自動運転ソフトウエアは、従来の車載組み込み型ソフトウエアとはかなり性質の異なるものであることをご理解いただきたいと思います。
次回は自動運転ソフトウエアを習熟させる道路環境の範囲を規定した、運行設計領域(Operational Design Domain:ODD)について説明したいと思います。
Toshihide Ando | 安藤俊秀
ティアフォー・フェロー
2019 年入社。前職ではソフトウエア開発を中心に、自動車の各種電子システム製品などの研究開発に従事。技術本部バイス・プレジデントを経て、現職。
ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。
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